第26章 狼の里にて 後編*
琥牙を気にかけて見詰めていた供牙様が、私に視線を移し、心配げに話しかけてきた。
「………真弥?」
『あれ』を琥牙はどこかで見ていた──────
私が他の男性に触れられるのを何よりも嫌悪していた、よりによって、彼に。
いたたまれないというには軽すぎる羞恥が私を襲って、傍にあったグシャグシャのシーツで慌てて体を覆い隠した。
「あ………わ、わた」
向こうを向いたまま、私を居ないもののように接してくる琥牙に何を言えばいいのか。
話そうとすると唇が震え歯が鳴って、ただ自分はここには居られない、もう居たら駄目なのだと思った。
「ご……めんなさ……」
覚束無い動きでベッドから降り、大急ぎで戸口へ向かう。
「真弥!?」
朱璃様と供牙様の間をすり抜けた直後。
彼らの声が背中を追ってきたけど、私にはもう振り向く勇気は無かった。
分かりやす過ぎる別れ。
実際目の当たりにすると耐えられなかった。
─────────私は彼に軽蔑されたんだ