第26章 狼の里にて 後編*
そんな事を呟きつつ、ククっと受けている。
「なに?」
何か可笑しいことを言ったのだろうか。
牙汪がくつくつと低い笑い声を上げ続ける。
下にズボンだけ履いたそんな彼の様子を眺めながら、ほぼ裸の男女が向かい合い、何をしてるんだろうかと今更に思う。
「わりぃ。 あんま色気なさ過ぎてやる気なくなった」
「はあ!?」
色気がないだと!?
あんなにやる気満々だった癖に?
「……っか、どうせ最後までする予定なかったし。 それに、よくよく見るとあんた全然違うもんな。 よし乃はそんなに鼻低くなかったし、もう少し品もあった。 奴の執着に少し引っ張られたけど、何かもうスッキリして気が済んだ」
「悪かったわね」
確かに私はあそこまでキレイじゃないもん。
時代が違うのもお忘れなく!
けど待って、待って。
あなたのスッキリとかどうでもいいのよ。
それじゃ私が困るんだから。
「ダメ! 決めたんならちゃんとしようよ!!」
「……あのなあ。 おい、ちょっと。 乗ってくんな」
牙汪の膝にずいと乗ろうとした私をどかそうとするので、彼の体に回した腕に力を込めてそれを阻止する。
往生際の悪い。
だってしないと意味ないんじゃないの?
「いまさらそんな、照れなくっても」
「照れてな……っ! 舐めんなって。 っつか、挟むな! ちょッ、なにこの痴女っ、おい。 いいのか? 今お前の伴侶見てるぞこれ」
琥牙?
反射的に周りを見渡すも、いるわけが無い。
「見……っ?」
見てる?