第26章 狼の里にて 後編*
彼女たちのさ迷う魂。
この人が簡単に、複数とはいえ女性に殺されたとは思えない。
それは多分、供牙様とその理由は同じ。
よし乃さんを想い続けていた牙汪。
それに自分を重ねて、それで彼女たちの気が済むのなら。 そう思ったのかも知れない。
「こないだ里で暴れたり私にこんな事をしたのは、もう終わらせようとしてた、琥牙の執着を煽って、生かせるため……?」
無言になってしまった牙汪を見詰めながら、途切れ途切れに話しつつ、バラバラだった今までの出来事を頭の中で整理していく。
「貴方がお義母…朱梨様から持たされたあの薬瓶、あれは以前毒薬が入ってたものと同じ。 あと、私に彼の記憶を見せてくれたのは、貴方と供牙様の力? 今晩の前に、三人で話したんだね?」
私の目の前で、なんとなく決まりが悪そうに頭を掻いている、今の牙汪はどこか琥牙の雰囲気に少し似ている。
「オレは大した事はしてねえ。 そういやあのババア、薬には少し幻覚剤も入ってるっていってたな。 そういう間接的な役割もあったんだろ。 フン………ボーッとしてそうで、変なとこで鋭いのな。 そういや、よし乃もちょっとそんなだっけか」
だって、その時はそんなものかなあなんて思っちゃったけど、あんな服が和合の証とか言われても。