第26章 狼の里にて 後編*
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「──────────おい」
ぶっきらぼうなその声はやたらと鮮明に私の耳に届き、視線だけを向けると琥牙……でなく、彼の顔をした牙汪がこちらを覗き込んでいた。
彼の背後を見ると、ここは元の里の客室だとすぐに分かった。
再びこめかみに軽く刺さった痛みに顔をしかめて手のひらを当てる。
「わた……し?」
「まさかあれ位でぶっ倒れたのか? あの薬のせいかな……頭痛か? そんな話は聞いてねえけど」
私が視たあれは、琥牙の記憶……?
時系列も滅茶苦茶な、生々しい。
特に二つ目のあれは、まるで………
額に触れていた指先に視線を移し、じっと神経を研ぎ澄まさせると琥牙に触れていた、見えない熱をそこに感じた。
「……貴方は、生前の奥さんたちを助けたかったんだね」
そしてそのまま自分の手を見ながら言った。
はじめに彼に感じた違和感。
この人は、琥牙と同じに嘘つきだ。
「は……?」
脈絡もない会話に牙汪は珍しく気の抜けた返事を返してきて、私は視線を上げた。
「愛してなくっても、怨みから負の連鎖を繰り返してた彼女たちに同情してたんだね。 琥牙が死んじゃったら貴方も消えるだろうけど、奥さんたちもきちんと天に帰れなくなってしまう……から?」
「何だ……それ」