第26章 狼の里にて 後編*
そのままどうしようかと考えあぐねているといつの間にか牙汪が私の背後に回る。
ぬっと視界に入ってきた手のひらに体が固まった。
触られる────────……そう思って目を閉じる。
「………っ」
下から双乳をすくい上げてくる、その手つきは乱暴なものでは無かった。
ただそれが妙に滑らかで、離れた瞬間に肌に冷たい感触を感じた。
薄く目を開いて視線を落とすと、私の背中に体を寄せた彼が胸に手のひらを沿え、なにか液体を伸ばしている。
その後にやんわりと全体を揉んでくる。
ヌルヌルしてる、これはなんだろう?
そう思い周囲を見渡すと、テーブルの上に蓋の取れた遮光性の瓶があった。
どこかで見たような気がする。
考えているその間に、牙汪に胸を軽く搾るように揉まれたかと思うと、その先でそれを離す。
何度かそうされて、その卑猥な手つきに戸惑った。
不可解だった。
これじゃ、まるで。
「………なに…して」
普通に感じさせてるみたいな。
肌が塗られた液体で光り、これはなにか滑りをよくする、ローションのようなものだと想像した。
濡れてないと入らないから、なんて考えてくれてるなら、存外お優しい事だと思う。
頂きを避けた胸の中心を丹念に指の腹で摘み、私の好きな声で囁いてくる。
「こんなヤラしい胸、乳首立つとことか見たいだろ。 でかいくせに男みたいにちっこくてさ。 少し固くなってきたか」
「止めて」
自分の声でそれを無理矢理に被せた。
だって姿が見えないと逆に錯覚を覚える。
琥牙に愛撫されているのかと。