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オオカミ少年とおねえさん

第4章 雨夜のためいき



「おまえ、真弥に触んな」


伯斗さんと同じに、それよりも鋭く射る目付き。
寒気がしたのは自分の中の本能的なもの。

私たちがほぼ同時に口を開いた。


「きみ誰?」
「琥牙、何でここに?」


思わず口走った私を見て、高遠さんが察したようだった。


「ああ、例の弟さん? けどこれはまた………」

「琥牙!!」


一瞬で間合いを詰めてきた琥牙が、彼の肘下辺りの腕を掴む。
その顔が途端に歪み、強ばって力の入っていない高遠さんの指から、相当きつく握られてる事が分かった。

「つっ!」

「触んなって言ってる」

「ちょっと! や、止めて」

「……っ!? くッ。 の、ガキ」

「止めてったら」


琥牙が怒ってる。

高遠さんの顔から焦りが滲みはじめた。
彼のどこか人間離れした殺気にか、その力にか。

私の足も咄嗟の事に動けなかった。


「琥牙!! 止めなさい」


ぴくりと一瞬肩を震わせた琥牙がやっと私の方を見た。

指先が冷たい。
多分私は青ざめて震えてるんだろう。
そんな私の様子を見てか、彼がようやくその手を下ろした。


「………痛…」

「高遠さん! 大丈夫ですか」


腕を抑えて呻く高遠さんに駆け寄ると、息を大きく吐きながら大丈夫、とばかりに片手を上げる。


「……参った…な。 弟っていうか…狂犬みたいだね」

「ごめんなさい。 琥牙、いくら何でも酷いよ。 高遠さんに謝って」

「嫌だ」


意地を張る子供みたいにこちらを見ようともしない。


「琥牙くんって言った? ……っツ、骨にヒビいったかも。 知らないかもしれないけど、未成年じゃなきゃ、訴えられてもおかしくないんだよ。 これ」

「勝手にしろよ。 おまえ高遠って言うの? こっちも覚えたから」


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