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オオカミ少年とおねえさん

第24章 狼少年を追え*



目覚めたあとに寝室を出ると、紙切れがテーブルの上に置かれていたのに気付いた。


「また晩に」

簡潔かつ達筆なそのメモを指でつまみ、今朝は複雑な気分だった。


昨晩。
私がようやく落ち着いて、体を離した供牙様は何も言わず、そのまま私を肩と腕の間におさめて眠った。
自分の欲望を前に出す訳でもなく、いかにも彼らしくそんな所も琥牙と似ている。


だけど正直いい気分ではない。
……誰かにそんな風に甘えていいのは、こちらも甘やかしてあげられる、そんな同等の関係が成り立ってる間柄に限られるような気がする。


食欲も湧かなく、とりあえずカフェオレでもお腹に入れてから仕事に行こう。 そう思いミルクパンに火を入れて用意をしかけた時、メモの横に置いていたスマホの着信が立て続けで鳴ったのに気が付いた。


一つ目は二ノ宮くん。
彼の叔父さん(正しくは供牙様)が来てからの、こちらの近況について訊いてきている。
朱璃様や伯斗さんの所へは私からは連絡の取りようがないから、身軽に動ける彼が橋渡しになってるんだろうと想像した。

それに返す能書きを考えつつ、二つ目のメッセージを確認すると、送信元よりまず先に、その内容に目が釘付けになった。

『うちの近くのビジネスホテルで最近桜井さんの彼氏、よく見掛けるんだけど。 気になったから一応』


「琥牙が? 近くっ……て」


送信元は……確認すると、あの若干お節介そうな弁護士さん。
そう思い出してる間にも慌てて返信を打つ。

『どこか彼に変わった様子はありませんでした? 例えば髪とか』

『え、髪? 特には……よく覚えてないけど、元々少し茶色に染めてるのかな。 というか、珍しく返信早いね笑 何、喧嘩中?』


琥牙だ。

牙汪の時の彼は、白っぽい髪色の筈。

けど彼、未成年じゃないの? その辺も気になって連絡したんだけど。 そんな風に続くメッセージをまるで文字の形の絵を見るような気分で眺めながら、胸の動悸を抑えるのに拳を当てていた。

彼は今自分の身の事に起こっている事について知らないはずだ。

彼が今の琥牙なら、ううん。

一人でいるよりも、どちらにしろ今のうちに里に戻って、一度話をした方がいい。
朱璃様たちも事情を知ってるし、なにより今は供牙さんもいる。
なんなら私も行く。


それもあるけど、会いたい。

琥牙に会える?



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