第23章 狼の里にて 前編*
ククッ。 そんな軽薄な笑いと共に、少女の体がずるりと獣の体から離れ、草葉の間に膝をつく間もなく崩れ落ちた。
その直後、その狼が姿を変えたそれは長髪、長身の男性。
薄茶か、むしろ白に近い髪だろうか。
その髪に隠れて顔はよく見えない。
少女は地べたに体を横たえ、薄い目を開けている。
そこで、何をしていたかは明白だった。
まだ初潮も迎えていないような年端のいかない少女の下半身は丸出しの状態。
緩く広げられた股からは、腿まで伝うほどのおびただしい血液が見て取れた。
顔は乱れた髪で覆われ、息も絶え絶えに呼吸を繰り返し、時折「うう」と、わずかに口を開けて声にならない声を上げている。
まさかあんな少女を、獣の姿で……?
その子が倒れる直前、狼の真っ赤な陰茎らしきもので後ろから貫かれていた。
一瞬見ただけのあの光景が脳裏に蘇って、吐き気をもよおした。
『……なに、を……』
「っ……止めて下さい!!!」
立ち止まっている私を通り越し、前に飛び出した女性が、激しい制止の声と共にその少女へと駆け寄った。
今私から見えているのは後ろ姿だが、粗末な着物を来た長身の女性。
「ああっ……こんな小さな子を……酷い」
少女の背中の下に手を入れて助け起こし、悲痛な声でそう呟く。
「またお前か。 言っとくが、最後までは突っ込んでないぜ? 死んじまうからな。 手っ取り早く女にしてやっただけだ」
愕然としてその光景を見ていた私の体が、ぴくりと反応する。
────────この声
どこかで、どこかで確かに聞いた。
口調が違うだけで。
あれは。