• テキストサイズ

オオカミ少年とおねえさん

第22章 郷曲におもむく(身長)




「……あれについて何か策があるのか?」


あれ、とは琥牙の事だろう。
策と呼ぶようなものはなくって、だからこそ私はそれを探しに来たつもりだった。


「ありません、が。 お母様にお話を伺いたくて」

「何でも聞くといい、遠慮せずに。 お前は息子が見初めた嫁だ。 あの気難しい性格の雪牙まで気に入られてる位だし。 裸の付き合いとも言うしなあ」


ハハハッと軽やかに笑う。
彼女の周囲には、伯斗さんを初め誰かが常に傍にいる。

お風呂に誘ってくれたのは、二人っきりでこうやってゆっくり話をするために、時間を取ってくれたのだろうか。


「お母様は、わざと琥牙の成長を阻害されていたのですか?」


以前から、不思議に思っていた事。
冷静な彼女を見るにつけそれが確信に変わっていった。
きっと彼女は琥牙の『あの姿』を知っているのだと。


「んー? ………まあなあ」


すぐにはそれに答えず、彼女が頭に巻いてるタオルが落ちないよう位置を確かめた。


「真弥。 私はここの自然を守りたいんだよ」


「自然……ですか?」


見た目の割に落ち着いた、ゆったりとした話し方だ。

琥牙を思い出した。


「贅沢は要らないし、里を大きくする気もない。 ここの者は、皆食うためだけに働いている。 少しばかり珍しい資源があるからとて、先祖代々のここを採掘場などにして荒らされたくない。 私の夫、先代からもそう託されているからなあ」


彼女はとても若く見えるけれど、その時に再婚などは考えなかったのだろうか?


「人間ならばお嫁入りの先で夫が亡くなれば、また人の世界に戻りそうなものですが。 お母様はそうでは無かったのですね」

「ハハッ。 大層なものではない。 夫を愛してるのもあるが、私はここが好きなんでね。 この地の奴らの事も含めて。 さて、すれば他言無用を約束してくれるな?」


/ 506ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp