第22章 郷曲におもむく(身長)
「……あれについて何か策があるのか?」
あれ、とは琥牙の事だろう。
策と呼ぶようなものはなくって、だからこそ私はそれを探しに来たつもりだった。
「ありません、が。 お母様にお話を伺いたくて」
「何でも聞くといい、遠慮せずに。 お前は息子が見初めた嫁だ。 あの気難しい性格の雪牙まで気に入られてる位だし。 裸の付き合いとも言うしなあ」
ハハハッと軽やかに笑う。
彼女の周囲には、伯斗さんを初め誰かが常に傍にいる。
お風呂に誘ってくれたのは、二人っきりでこうやってゆっくり話をするために、時間を取ってくれたのだろうか。
「お母様は、わざと琥牙の成長を阻害されていたのですか?」
以前から、不思議に思っていた事。
冷静な彼女を見るにつけそれが確信に変わっていった。
きっと彼女は琥牙の『あの姿』を知っているのだと。
「んー? ………まあなあ」
すぐにはそれに答えず、彼女が頭に巻いてるタオルが落ちないよう位置を確かめた。
「真弥。 私はここの自然を守りたいんだよ」
「自然……ですか?」
見た目の割に落ち着いた、ゆったりとした話し方だ。
琥牙を思い出した。
「贅沢は要らないし、里を大きくする気もない。 ここの者は、皆食うためだけに働いている。 少しばかり珍しい資源があるからとて、先祖代々のここを採掘場などにして荒らされたくない。 私の夫、先代からもそう託されているからなあ」
彼女はとても若く見えるけれど、その時に再婚などは考えなかったのだろうか?
「人間ならばお嫁入りの先で夫が亡くなれば、また人の世界に戻りそうなものですが。 お母様はそうでは無かったのですね」
「ハハッ。 大層なものではない。 夫を愛してるのもあるが、私はここが好きなんでね。 この地の奴らの事も含めて。 さて、すれば他言無用を約束してくれるな?」