第22章 郷曲におもむく(身長)
砂利というより岩場というか、とにかく酷い悪路だ。
そんな手摺もない道ならぬ道を二ノ宮くんがタッタカタッタカ走る。
途中に私の背の高さ以上もある段差、それを助走も無く跳ぶ。
私は……何というか。
舌を噛みそうで彼にしがみつくのに必死で、とにかく大人しく荷物役に徹していた。
胸やお尻をぎゅうぎゅう彼に押し付けてる形になってるけど構ってられない。
「あそこに小さい明かりが見えるだろ? 里の場所を隠す為にいくつかあるんだけど、大概は二、三匹の若狼が守ってるんだってさ」
「げ、厳重、なの、ね」
運ばれる振動で話す言葉も揺れる揺れる。
「規律は厳しいけどね。 だって若狼の子供は里で過ごすんだよ」
「どう、いう、事?」
そしてアナタの息がちっとも切れないのもどういう事?
「人質に決まってる」
忠誠心を試す為とかなんとか、まあ色々らしい。 二ノ宮くんが説明してくれる。
確かに厳しい。
そんなにまでしなきゃならない理由があるって事だろうか。
***
そんなこんなで数十分後……。
私は久しぶりに地に着いた安心感で両足を踏みしめてから、その場で軽くしゃがんだ。
長時間同じ体勢で力を入れていたため、凝り固まった筋肉が異なる方向からの圧迫で、じんわりとほぐれていく。
「…………」
つかまってるだけとはいえ、単なる一会社員の自分にとってはかなりキツい道中だった。
くう、明日は腕や肩や腰が筋肉痛に違いない。
私ももう少し鍛えなきゃ、と心に誓う。
「はい、到着」
二ノ宮くんにそう言われて首を左右に振るも、周りには見渡す限りの草原、いや。
「は、花畑……?」