第22章 郷曲におもむく(身長)
「真弥、浩二。 茶でも飲まんか」
丁度祖父が入口の板の間に冷たい麦茶の入ったグラスが並んだ盆を置きに来た。
板の間に座って有難くそれを頂戴しつつ、うちの家系図なんか何を今更? そう言う祖父に詳細を訊いてみると、寺の過去帳の写しを持っていると言う。
「それなら仏壇の方にある」
そうして出してもらった四つ折りの大きな用紙と、先ほどの土蔵で見付けた家系図を照らし合わせて更に昔を辿る。
生々しい夢の中の、彼ら人狼の始祖である供牙様の言葉を疑っていた訳ではないが、それだけに自分の出自が気にかかっていた。
「あった。 父親が違うけど次女の婿がうち家を継いでそこから……名前はよし乃」
長女には確かに『加世』とあった。
彼女のそこから下は血縁を示す系図が途切れている。
これを見る限り加世さんの義妹の、このよし乃さんが、私のご先祖様という事になる。
そしておそらく彼女にも、なんらかの縁が彼らとあったに違いない。
「はあ……500年前ねえ。 そん時もうちの家系はみんなデカかったりして」
面白がってそれを覗き込んでくる浩二にまた頼み込み、再び車を走らせる。
「なあー。 ばあちゃん家で飯位食ってこうぜ? 腹減ったよ俺。 大体そんなボロボロの木箱の中身って、一体なんなの?」
そう愚痴る気持ちも分かる。
午前中から興味本位でついてきただけのつもりの彼にとっては、思わぬ生産性のない休日だっただろう。
「うーん。 私にも分からないけど……送ってくれたら浩二は帰ってくれていいよ。 今日はホントに助かった。 今度なんかご馳走する」
なんだそれ、訳分かんね。 そんな事をボヤきつつ山道をひた走り約40分後。 目的地に着き車を下りると、そこは鬱蒼と茂った林の脇道だった。