第22章 郷曲におもむく(身長)
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『あの事件』から数日後にマンションに顔を出してくれた伯斗さんだった。
私にとっては待ちかねた訪問だ。
「うちの里。 でございますか?」
まず雪牙くんの容態を訪ね、傷はもう塞がりかけで元気なのですが、逆に動きたがるのに困ってます。 そんな風に伯斗さんが苦笑する。
ほっと一安心して、次の質問を投げる。
「琥牙は今そちらに居ませんよね?」
「……よくお分かりで。 里に来られるのは構いませんがしかし、私、こちらへの訪問に迷って実は二、三日周りをウロウロしていたのですが。 思ったより真弥どのがお元気そうで驚きましたよ」
伯斗さんが保健所に通報されなくて良かった。
おそらく琥牙の事だから、里からも姿を消してるに違いない。 私はそう思っていた。
「それは大丈夫です。 少し確認したいのですけど。 ……以前雪牙くんが言ってました。 小さな時に獣化した彼は、その時に琥牙みたいな高熱が出たのだと。 そんな風に、彼らの成長時には何らかの体調の変化があるのですか?」
「体調の変化……そうですね。 私の知る先々代よりの話ですが、うちの里の者は人から狼へ成長を遂げる際には確かに変調を来たすそうです。 以前ご紹介いただいた二ノ宮どのの様な分家の中には狼から人へと変化するものもありますが。 それにしても、真弥どの。 今のこの状況で里へは一体何用で?」
落ち着いて考えると琥牙も甘いと思う。
私の事が本当に心配ならば、伯斗さんなども残さず私の前からキレイさっぱり居なくなれば良かったのだ。
こんな状況で絶対、諦めてなんかやらないんだから。
そんな思いを胸にして。
「琥牙のお母様に会いたいんです」
まず私が取った行動は然るべき準備ののちに狼の里に向かう事だった。