第22章 郷曲におもむく(身長)
「連絡もしないで何事かと思ったら、着いてすぐおばあちゃんの所に行くだなんて。 慌ただしいわね。 夕食位食べて行くんでしょう?」
「こっちにはちょっと顔出しに来ただけだから!」
今日実家へは多少の衣類なんかを取りに来たのだけど、まさか母親(168)が居るとは思わなかった。
共働きのウチは普段から両親不在が当たり前だ。ちなみに父親(183)はほぼ転勤状態である。
「真弥、来てんの? ばあちゃんとこ、俺も暇だからついてっていい?」
「浩二。 いいけどそれじゃ捜し物、手伝って!」
車出すよ。 助かる! そんな便利な弟の浩二(186)の申し出で、実家よりもう少し田舎に奥まった祖母の家へと向かう。
そこそこどうでもいいが、うちは長身一家である。
車を走らせていくうちに蝉の声が大きくなり、同時に目に映る緑も濃くなってくる。
それらを含んだ瑞々しい風の匂い、それを巻き上げる土の匂い。
そんな田舎独特のただずまいを五感に染み込ませば、都会暮らしのストレスも癒される。
綿飴みたい真っ白な入道雲に目を薄く開けながら、上りの細い道路に車が入っていった。
車内で浩二が話し掛けてくる。
「みんな元気? 彼氏とあの子犬みたいな元気なガキ」
「んー。 あんまり元気じゃないのよね。 雪牙くんが怪我しちゃって」
軽く掛け合うも琥牙の事は伏せておいた。
マジかよ、どうせ喧嘩だろ? そんな会話をしつつ車窓に流れる景色を眺めながら、私は先週伯斗さんと話していた事を思い出していた。