第21章 望まない変化の襲来
それを拭いもせず琥牙は小さな声で続ける。
「伯斗、時々でいいから……しばらくあとを頼めるかな?」
「……畏まりました」
「琥牙!!」
きっと彼ならこうするのだと分かってた。
それでも、それでも、失いたくない。
立ってる琥牙の胸に体を寄せて縋るように言う。
今まで、いつでもなんでも二人で話し合って決めてきた。
「一緒にいるよね。 そしたら一緒に考えればいいよね?」
『異なる』からこそそれが大事なのだと、私たちはそう思ってやってきていた。
答えない代わりに私に両腕を回して抱きしめる彼の体が震えている。
出会った頃より大きくなったはずの彼が今はひどく頼りなく、その力もいつもよりも弱々し過ぎる一方で隙間のないように丹念に私を包んでいた。
どこでも良かった。
服でも首でも肩でも背中でも。 それに私が必死にしがみ付く。
「言葉が見付からない」
「こ────────」
私の頬を両手で挟んで、初めてした時みたいなそんな口付けをしてくる。
大事で、丁寧で、強引で。
でも今そんなのは要らない。
まるで別れ際にするみたいじゃない。
それに私が顔を背けて抗い、そしたらすぐに彼は私から身を離した。
「行かない…で」
ぽつりと私がそう口に出しても、それから琥牙が私を見る事は無かった。