第21章 望まない変化の襲来
「けど、目が覚める少し前……倒れる前のその瞬間に雪牙が叫んだ声が聞こえた。 真弥、そう言ってた。 おれは真弥に何をしたの?」
「な……なにもして無い」
ただ首を振った。
「伯斗、おれは何をしていた?」
黙り込む伯斗さんからも視線を外し、破れた、というより引き裂かれた私のスカートに琥牙が目を止める。
それに気付いて慌てて両手で引き寄せその布地を膝の間にまとめた。
「これ、転んで……また。 そしたら、雪牙くんがびっくり…して。 私、そそっかしい……から」
上手い言い訳が思い付かない。
情けなくて泣くつもりなんかなかったのに、だけど勝手に目にじわりと水が溜まる。
「………真弥がそそっかしいのは知ってるよ。 嘘も下手だしね」
「駄目……だ…よ」
彼の暗い顔が涙で滲む。
涙を流してないだけで、琥牙も泣いてる。 そんな表情をしていた。
それを自分で許せないのか時折唇を噛んでいた。
「……もし、獣体で無理矢理襲われたら、死んじゃうところだった。 怖い思いさせたんだね」
「怖くなんかない。 琥牙」
大丈夫だから。そんな言葉を繰り返す。
泣き笑いみたいな表情しか作れなかったから首を振り続ける、そんな私に彼が眉を寄せる。
彼が更にぐっと噛み締めた唇からとうとう赤い血が滲んだ。
「いつまたおれがこうなるか分からない」