第21章 望まない変化の襲来
私に聞かれても。
その狼は目を閉じて普通に呼吸をしているようだ。
とりあえず、恐る恐る声を掛けてみる。
「こ……琥牙?」
「……暑い」
そう呟いた掠れた声。
ナチュラルな毛皮が暑いのだろうか。
毛布を取ってやると、薄らとその琥珀の眼が開いた。
雪牙くんを顔を見合せ、彼も小さな声で兄を呼ぶ。
「兄ちゃん……」
「……ッ頭、いて」
ゆっくとシーツに四肢をついて起き上がったその狼に違和感を感じた。
供牙様の時は琥牙と間違えた位だというのに。
今その本人を目の前にしているというのに、まるで初めて会った存在のようだった。
「兄ちゃん……?」
戸惑ったみたいに呼び掛けている雪牙くんもそう感じているのだろうか。
「人間の女……と人狼のガキ……? ふう、調子悪ぃな」
そして口調も表情も違う。
いつもどこか目元に緩い曲線を描いていた琥牙。
狼の姿とはいえ今の彼の金色の瞳はどこか投げやりで、時々片方の口角が上がる以外は酷く硬質な感じがした。
「女、来いよ。 なンか収まんねぇ」
苛々したようにそんな事を言う彼に戸惑う。
あんなに苦しんでたのだから、どこか異常はないだろうか。
「……琥牙? あの…体は大丈夫……?」
それか熱から覚めたばかりで、なにか悪い夢でも……
「──────────きゃあっ!?」