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オオカミ少年とおねえさん

第21章 望まない変化の襲来




『その日』は突然やってきた。


久々にまた体調を崩してしまった琥牙だったが、今度は高熱が一向に引かない。
時々目が薄く開く以外に意識さえも戻らない。


「さて、これは私の出番ですかな」


そう言って琥牙に近付こうとする伯斗さんを牽制しながらも、私は困り果てていた。

39度近い熱がもう三日も続いている。

風邪にしては症状が激しい。
この季節にインフルエンザは無いし。

私は大学では家政科にいて、一通りの栄養学などの知識はある。
けれど今の琥牙はスープどころか果物をすりおろした物さえ受け付けなかった。

汗を拭いたあとに体を温め、むせないように唇を湿らせて小さなスプーンで少しずつ少しずつ水分を摂らせる。

昼は仕事に行っていた代わりに、雪牙くんが琥牙を看てくれていた。
呼吸が酷く苦しげで、タオルで拭う傍から額に汗の玉が浮かぶ。

今も私と並んでベッドの脇に座っている雪牙くんは心配そうに自分の兄を見守っていた。


「兄ちゃん、どうしたんだろ? 里でもここまでのは無かったのに」

「きっと大丈夫。 明日タクシー呼んで病院に連れてく」


病院などには行った事無いんだろうけどそんな悠長な事もいってられない。


「──────」


一瞬表情が変わった雪牙くんを見ながら言葉を続ける。
もし肺炎になどなれば私にはお手上げだ。


「だってちゃんと診てもらわなきゃ、こんな」


そう言いかけて、蒼い目を見開き口をぽかんと開けてる雪牙くんに何事かと思ってベッドに顔を向けると─────────、そこには獣が横たわっていた。


……頭では分かっていても一瞬室内を見渡して琥牙の姿を探し、そしてそこへもう一度目を元に戻す。


「………兄ちゃん」

「なんだよね」


青みがかった白の毛色だった。
今まで見た中では供牙様と伯斗さんの間に近い大きさだろうか。


「そういえば、オレがうんと小さかった時もいきなり倒れてこんな風なって、姿が変わったって聞いた事ある。 これ、兄ちゃんが成長したって事なのか?」


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