第20章 月下の交合*
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「…………っ」
目が覚めた時、一人だった。
外が白々と明るくなりつつある明け方。
レースのカーテンからは微かな光が漏れている。
琥牙がここに居ない事にほっとした。
涙で頬が濡れてる私を見たら悪い夢でもみたの? そう言って彼は心配して抱きしめてくれるだろう。
けれどもそんな風にされる気分では無かった。
『地獄にいる』
『薄幸な』
彼、琥牙の性質に似て深く関わり私が知っている人達。
そのほとんどは不運な最期を遂げたかもしくは夭折しているらしい。
そんな運命を受け入れろというのか。
いつの間にこんなに愛してしまったのだろう?
知ればもう身動きが取れなくなると恐れる程に。
「………って、朝っぱらからノロケてもね」
感情の昂りが治まって、泣き止んでツッコミを入れたら喉が乾いてきた。
起き上がってキッチンに歩き、グラスにお茶を入れながらじっと考える。
なんにしても。
愛し合うのは良い事に違いない。
世の中にはそうしたくても出来ない人もたくさんいるのだから、多少のトラブルなんて仕方が無い。
そもそも幸せと不幸せは背中合わせでもある、と私は思っている。
過去に辛い恋をした事もある。けれど私はそれ以上に幸せだった記憶があった。
それに、私は甘んじてそれを受け入れるつもりも毛頭無く、実はずっと引っ掛かっていた事がある。