第20章 月下の交合*
「お前の故郷は私の里と近かろう? ……だが、おそらく呼び合ったのはあれの類いまれなる血のせいだろう。 しかしそのせいで、またお前を悩ませるかもしれん」
「供牙様のお子様はどんな方だったんですか」
類まれなる血。
全てを持っていそうなこの人までそんな事を言う。
「それを見る前に私も妻も世を去った。 比類なく強く冷酷で…しかし、薄幸な人物だったと聞いている」
『薄幸な』
その言葉を聞いてどきりとした。
「受け入れる事だ。 私に対してそうした様に」
「彼を、ですか?」
「伴侶を愛するお前の意志を。 こうしてまた出会い、迷っていたならいつでも抱いてやろう。 お前の心でも、体でも」
「あ、の。 供牙様の伴侶は今……」
「人の理で地獄にいる」
そしてこの闇の中を名月だけを友とし、一人永遠に漂い続けなければならない私もまた。
地獄───────────────────