第19章 狼社会の不文律
「おい、お前も突っ立ってるんじゃない」
そう窘められて二ノ宮くんも一緒になってババっと地面に伏せる。
「お願い致します。 私たちを里に迎え入れて下さい!!」
「そんな事? 伯斗に言ってよ……その手の話は。 人に姿を変えられるタイプの人狼なんて分家でもそうそういるもんじゃないし、特に緑の目の人なんて、かなり腕が立ちそうだからみんな喜ぶんじゃないの」
大の大人が土下座して跪いている。
そんな光景に軽く目眩を覚えた。
「まっ誠でございますか!!??」
色々合点がいった。
彼らの強さって力じゃなくって。
病弱だった琥牙を伯斗さんも雪牙くんもみんなが離したがらない理由。
以前に琥牙が言ってた時は深く考えていなかった。
『始祖の直系で、人と狼の頂点だったその子供と同じハーフの特徴を持つ人狼』
それは彼の血なのだ、と。
***
「そしたら二ノ宮くん、会社辞めちゃうの?」
「ん? 辞めないよ。 今の暮らし気に入ってるし。 叔父さんも自分で運送屋やってるし」
今日のお詫びにと言ってはなんですが。
そういう二ノ宮くんの叔父さんのご厚意で、私たちは現在中華料理店にいる。
円卓に並ぶ料理の中で、大きな北京ダックを独り占めしようとする雪牙くんをたしなめる琥牙のいつもの風景。
叔父さんはいかつい外見の割に気のいい人で、良いんですよ。 沢山食べて下さい、なんてニコニコとそれを見守っている。