第18章 避ければ当たる面倒事
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そんな生活が数日過ぎ、果たしてこれに意味があるのかとも思えてきた。
本来は憂鬱な通勤の道中は楽しいけど、雪牙くんに悪いし。
夜に琥牙に言ってみるとそうだなあ、と夕食の唐揚げをもりもり食べてる雪牙くんに声をかけた。
「雪牙、どんな感じ?」
「分かんね。 でも明日辺りくんじゃねぇかな? 段々向こうの気配が濃くなってる」
だってさ、気を付けてね。 なんて言ってくる。
二人とも呑気なのか心配してるのかよく分かんないのよね。
そしたらソファに寝そべって本を読んでた琥牙がそこから目を上げた。
「たとえばさ。 日本の妖怪、霊魂や西洋の悪魔なんか色々なものにランクってのがあるでしょ?」
「んー。 なんか聞いたことある。 悪魔だと偉いのはサタン、みたいな? あ、私は妖怪まくら返しがすきだよ。 意味の無いことを敢えてする姿にこだわりを感じるよね」
「……変わってるよね、真弥って。 そう、その例だとまくら返しって座敷童の仲間なんだけど、その中では神階が低いんだよね」
そうなの? 琥牙が言葉を続け、そんな感じでおれたちにも位がある訳だけど、雪牙は始祖の直系だからまず大丈夫なんだよ。 そんな事を教えてくれた。
何が大丈夫なのかは分からないけど。
「まくら返しはいまいちなのか」
「そこじゃないよ……でも、まだ群れに入ってない野心がある若い狼の中には、自分より上の位の狼と戦って勝つ事で、更に上を狙う者もいる。 今回のはその手のやつじゃないかなあって、思ってるんだけど。 こないだの帰り際、向こうがガン見してたでしょ? あれって喧嘩売ってる証拠なんだよね」
あの熱視線はそういう意味なのね。
「決着着くまで人質って訳じゃないけど、伴侶や子供が狙われるパターンが多いよ。 それ程の相手じゃ無さそうだから、雪牙に任せる事にしたけど」
「雪牙くんのランクの方が二ノ宮くんより高いって事? でも、何だか面倒くさいのね」