第18章 避ければ当たる面倒事
雪牙くんみたいな硬派も琥牙みたいなフェミニストも、女性を大事に思う点は同じで入口が違うだけなのかな、なんて思った。
「でも相手って、そんなに警戒する程強いの?」
「んな事ねぇ。 兄ちゃんが近付いてからやっとこっちに気付いたんだろ?」
電車内で大きな声を出す雪牙くんにしっと人差し指を立てる。
ぱっと口に手を当てうん、と頷き屈んだ私の耳元に顔を寄せて小声で話してくる。
いちいち仕草も可愛いんだなあ。
「そうだけど?」
「そんなら伯斗だって勝てんだろ」
「そんなもの?」
「兄ちゃんはこんだけ離れてても異変に気付くんだからな! さすがっつーか」
勘がいいとか鼻が効くのが強いの?
まあ確かに狼なんかにとってはそんな本能が死活問題なのかもね。
人間でも、何をもって強いかなんて分からない。
お金やステータスだったり外面だったり賢さや優しさだったり。
雪牙くんは色んな意味でとても強い子だと思う。
出来れば私もそうなりたい。
そんな事をぼんやりと考えながら並んで歩いているとあっという間に会社の前に到着した。
「案外近いんだな! 道は覚えたから仕事終わったらまた連絡しろよ」
まもなく本格的な夏の訪れを示すように、夏空の下の大きな雲に眩しさを感じて目を伏せる。
そんな中を雪牙くんがぶんぶん手を振り走り去って行った。