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オオカミ少年とおねえさん

第18章 避ければ当たる面倒事



***
そうして翌朝。


「真弥! 行こうぜカイシャ」

「待って。 暑いんだからこれ持ってね。 帰りは水分切らしちゃ駄目だよ」


お茶を入れた水筒を肩から斜めに掛けた雪牙くんが、張り切った様子で玄関に向かう。
その姿はピクニックでも行く小学生のようだ。


他の仲間を警戒して私の送り迎えをする任務に就いたのは雪牙くんだった。

別に全然構わないんだけど、よく考えるとなんで私に?
そして送り迎えをするのは琥牙じゃないんだろうか。


「私もその方がいいと思います。 雪牙様にとっては、そろそろ実戦を知るいい機会ですし。 しかしこんな近くに同胞がいるとは。 私としてはそちらの方が気になりますなあ」


昨晩家に来ていた伯斗さんも琥牙の提案に頷いている。

それはさておき、こないだ琥牙の服などを購入したが、考えてみれば自分の実家に弟のお古がたんまりあるはずだと私は目論んでいた。


「そういえば私、今週末にちょっと実家に帰りたいんだけど。 取りに行きたいものがあって」

「真弥の実家ってどこ?」

「矢矧市。 ここから一時間位の田舎なんだけど」


ほう。 私たちの里から近いのですね。
伯斗さんは驚いた目をしていた。


しかし実戦、ねえ。
私にとってはそっちのが怖い。

ましてや血の気が多い雪牙くん。
街中で流血戦とか止めてよ。


そうしてやや心配な心持ちで、私は雪牙くんと出勤のためマンションを出たのだった。


「真弥はオレの後ろからついてきな! 危ねぇからな」


ピッと親指で後ろを差して先を歩く雪牙くん。


「はい」


小さく笑いながらもそうさせてもらう。
雪牙くんの、今どき古風なこういう価値観って、どういう経緯で形成されたのかが気になる。

琥牙とは正反対だから余計に。


「ん? 男は女を守るもんだ。 オレを産んだ母ちゃんも義理の義姉さんも、死んでるからな。 もっとオレがしっかりしてたら違ったのかも知んねえ」


何でもない口調のように聞こえ、でも長く透けたまつ毛を伏せ気味にして自嘲じみた表情。
愛しいというか尊いというか。


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