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オオカミ少年とおねえさん

第18章 避ければ当たる面倒事




「さっきの、同じ会社の人?」

「そうだよ」


ふうん。そう言う彼は特に不機嫌になっている様子はない。

いつも見てると気付かないけど、改めて観察するとここ最近で琥牙はぐっと大人っぽくなった。
背も数センチは伸びてるし顔付きも男らしくなって、服ももう私のじゃ肩の辺りがキツそう。

二ノ宮くんに見初められるのも分かる。


「明日からここに迎えに来ようかな」

「は、なんで? 片道一時間半だよ? 今日も驚いたけど」

「天気もだけど、ちょっと妙な感じして」


またヤキモチなの?
いくら何でも度を超えすぎだ。

呆れた表情をしているだろう私に構わず、琥牙は窓の外に視線をやってぽつりと呟く。


「まさか同族に会うとは思わなかったし」

「へ? 同……」

「しかも多分ちょっと面倒くさいタイプの」

「二ノ宮くんが? ただのゲイじゃなくって?」


初めて聞いたみたいな単語に琥牙が首を傾げる。


「ゲイ? ……とにかくおれたちが普通の人間より危険な事位は真弥も分かるでしょ」

「でも、二ノ宮くんはずっと普通の会社員だよ。 ていうか、琥牙と雪牙くん以外にも人狼がいるってのもびっくりしたわ」

「別におれの里のやつらがすべてだって訳じゃないんだよ」


琥牙がそう言って軽くため息をつく。
厄介事が増えたなあ、なんてそんな表情だった。
彼の故郷以外の仲間とはあまり仲が良くないって事かな?
テリトリーとか。
少なくとも動物の世界ではそうだったはず。


「おれは割と面倒くさがりなんだけど、真弥に関しては全然そうでも無いんだ」

「?気が合うね。 私もそう。 ね、雨が上がったら帰りに少し洋服見て行こ」


いいよ、そう柔らかく微笑みかけてくる琥牙につられて私も自然に口角があがる。


「真弥の笑ってる顔好きだよ。 はじめて駅で会った時からずっと。 キスしたい」

「んっ? ……い、家に帰ってから、ね」


外は雷鳴っててどしゃ降りでも後ろのサラリーマンが咳払いしようが会社員が実は狼だろうと気にしない。

バカップル万歳。



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