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オオカミ少年とおねえさん

第18章 避ければ当たる面倒事




「ううん。 助かった……のかな? でも悪い人に絡まれてたとかじゃないよ」

「ホント? けど俺も今晩は遠慮したけど、最近付き合い悪いよね。 桜井さんって」

「そうかな。 まあ、色々と家の事とか。 じゃあ、この辺で!」


そう言って今度こそ手を上げるとまた声が追ってくる。


「家……って、待って」

「………なに?」

「俺の名前知ってる?」

「…………他の課の」

「まあそうだね。 俺は人事課だから」

「隣の」

「上のフロアだよね」

「……同期で」

「一個後輩なんだよね」


二の句が告げない私にその男性がぶっと吹き出した。


「面白れー……春の飲み会ん時話して自己紹介したじゃん。 お互い一人暮らしって言ってたし」

「……ごめんね」


知ったかぶりして。

しかもそう言われてもまだ思い出せないし。


「や、全然。 気にしてない気にしてない。 桜井さんは身長とかで目立つけど俺はそうでも無いし。 俺は二ノ宮っていうの。 二ノ宮保。 こっちの課の性格でちょくちょく先輩方の飲み会に駆り出されてさ。 また会った時はよろしく」


二ノ宮くんっていうのか。
フランクで明るい人だなあ、そう思った。

よく飲み会なんかに誘われるの分かる。


「あれ、桜井さん……傘は?」

「ん? 持ってないよ。 今も晴れてるし」

「降るよ。 結構」


まるで琥牙みたいな事を言う。


「5分だけ、賭ける? 駅に着く前にずぶ濡れなるよかいいと思うけど」

「なにを賭けるの?」

「マックの不味いコーヒー」

「それお互いダメなやつ」


つい笑ってしまい、5分位ならと思った時に、笑顔だった二ノ宮くんが訝しげな表情をした。



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