第2章 狼を拾う
「伯斗帰ったの?」
「うん。 琥牙、ヌルヌルってどうしたの」
「そこにあるもの適当に使ったら目が痛くって」
「ん……この匂い。 琥牙ってば、コンディショナーで顔と体洗ったの?」
「コン……? 真弥からこの匂いしてたからこれかなって。 違うの?」
伯斗さん曰くまだ人の世界に慣れていないらしい琥牙。
するとおそらくシャワーの入り方も分かんなかったんだろう。
ボディソープは浴室の奥の棚にあるから場所を教えても、目を固く瞑ってる彼が手にするのは無理だ。
「ちょっと入るね」
一応断り浴場に足を着けかけ、裸の琥牙を見て一瞬固まった。
「真弥?」
てっきりまだまだ子供なのかと思ってたら。
「これ、使って」
「真弥が洗ってくれる?」
「無理無理。 それ泡立てて、しっかりこすってから流すのよ」
手近にあった方の石鹸を強引に琥牙の手に握らせてから、その場を離れる。
伯斗さんてば嘘つき。
『身寄りの無い少年』なんて。
あれって普通にもう立派な大人じゃないの?
確かに体は華奢な方だけど、それでもしっかり筋肉のついた体。
手足はすんなりしてても、肩や背中なんかも既に女の私と全然違うし。
更に言うならまだ幼い顔に似合わないアレ。
それともそっちも狼的にはまだ子供なんだろうか。
……そんな若干邪な想像は脇において。
「それに……伯斗さんのいう通り琥牙が成長したとして」
確か人狼って、人を襲うんじゃなかったっけ?