第13章 月色の獣 - 馳せる想い*
生命は等分ではない。
そんなものは畜生として飼われていた私がよく知っている。
強ければ生き延び、そして護れる。
今の私にはその力がある。
なぜ加世はそれを理解出来ないのか。
私が路傍の虫でも加世はついてきてくれたとでもいうのか。
「それならばわたくしは供牙と一緒に踏み潰されるだけ」
そんな風に寂しげに言う加世を抱きしめる。
理由がなんであれ、もう加世に孤独など味合わせたくは無かったのだ。
体の隙間を埋めるために抱いて、そんな時だけは余計な事を考えずに済んだ。
「……………」
目を背けて顔を覆う加世の手の隙間から震える唇が見える。
何かを言う前に、息をする前にさえ小さな歯でそれを噛み締める。
こんな時にまで自分に抗おうとする。
体は応えているのに。
「なぜいつも堪える? 私に抱かれるのは嫌か」
「い、いいえ。 けれど供牙には分からないわ」
「やはり私が獣だからか」
「違うわ。 男性だからよ」
確かに供牙は加世に深い愛情を持っていたと思う。
しかし彼をただの男と認め、肌を薄紅に染めてささやかな反応しか返そうとしない加世を、供牙は女としても愛し始めていた。