第1章 リヴァイ兵長
いろいろややこしいことがあるのでエルヴィンの妹ということは伏せているナナ。
ハンジはそれを知っていたがこの3年間、一度もばらしたことはなかったし、時々兄の姿を見ようと調査兵団内に行った時だって、ナナが過って口を滑らしそうになった時もすかさずやって来てフォローしてくれたりしていた。
ナナはそんなハンジがとても好きだったし、そんな人がいる調査兵団に憧れていた。
そして、好きな人もできた。
人類最強の肩書きを持つ彼はいつも不機嫌そうな表情をしていて笑った顔を見たことがない。
ナナはその時々来て見る調査兵団の訓練を毎回目に焼き付けんとばかりにじっと見ていた。
彼は誰よりも素早く動くくせにその体の動かし方がとても繊細で綺麗。
いつからか憧れが特別な感情へと変わっていた。
そんな事をハンジに相談するとハンジは最初、腹を抱えて笑い飛ばしたが、今では(一応)真剣に相談に応じてくれている。
そんな家族のようなハンジに、しかもこんな夜中に訓練兵の宿舎まで来て何事か、というのがナナの今の心情である。