第1章 轟君
そんなこんなで私の家まであと少しになると、
「ゆき」
そう私の名前を呼んで轟君が立ち止まる。
いつもと違う様子に首を傾げれば、
「伝わってないかもしれないが、ちゃんとゆきのこと好きだからな」
『……!
…な、なんで今!?録音してないのに!』
「するな。今日で、1年、なんだろ」
そう先に歩き出す彼の頬が、いつもより赤く染まっている。
こんなこと、今まで1回でもあっただろうか?
心臓があり得ないくらい大きな音を立てている。
嬉しすぎて、びっくりしすぎて、一瞬、思考が回らなくなってしまった。
轟君に、好きって言われたの、初めて…
『嬉しい…!』
「いつまで立ち止まってんだ」
そう呆れ顔で、いつものように手を差し出してくれる彼に、なんとか駆け寄り歩き出す。