第7章 疑惑
降谷Side
降:「くそっ!」
悔しさと怒りが自分の中から、止めどなく溢れ出して来る。
僕は、RX−7のサイドウィンドウに拳をぶつけた。
数分前に、赤井から届いたメール。
そこに書かれていた衝撃の内容に、僕は居ても立ってもいられずにRX−7に乗り込んでいた。
向かう先は、赤井がミアを監視していた場所だ。
降:「あいつに任せたのが、間違いだったのか?」
ミアがコードネームを得た日に、赤井へ護衛を頼んだ。
その時、既に赤井が動いていたことを知った。
(僕は、どこかで「あの男なら問題ない」と、安心しきってしまっていたのではないだろうか?)
自分の愚かさを呪っても仕方ないと思い、僕はアクセルを踏み込んだ。
監視場所に停められたマスタングの横に、僕はRX−7を停める。
マスタングに寄りかかって立つ赤井に、すぐにでも飛びかかりたい衝動を僕は抑えた。
赤:「降谷くん…すまない」
普段は自信に満ち溢れ、誰の意も介さない姿勢を貫く赤井。
しかし、目の前にいる男は全く別人だった。
その姿に、僕は先程までの衝動が自身の中から消えていくのを感じた。
(こいつも、守りきれなかったことを悔いている。同じだ、僕たちが思うことは…)
僕は、赤井に対する仲間意識が芽生えていることを気取られないように、落ち着いた声で話し始めた。
降:「起こってしまったことは、仕方ないです。僕も油断していました。ここ数日、ミアは単独でも問題なく任務を熟していましたしね」
赤:「ああ」
降:「ミアの捜索をすぐに、しましょう。連れ去った相手が誰かわからない今、まずは居場所を突き止めるのが先です」
赤:「そうだな…あいつが消えたのは…」
ミアが失踪した状況を僕に話し出そうとした赤井の言葉を、僕は遮る。
彼女のことだから、きっとアレを身につけて任務に就いているという確信が僕にはあったからだ。
降:「大丈夫です。これでわかります」
僕は、赤井に携帯画面を見せる。
赤:「GPSを身につけていたのか?」
降:「ええ。万が一の時のために。僕、優秀ですから」
この時の僕は、彼女を連れ去った相手をターゲットだと思い込んでいた。
だから、赤井に冗談を言う余裕さえ残っていた。
僕は思いもしなかった。
この時、彼女が窮地に追い込まれていることを…