第7章 疑惑
赤井Side
今日も組織の任務に就く彼女を護衛するため、俺は潜入先へマスタングを走らせていた。
今日は、ターゲットの男とホテルで会うようだ。
俺は、数日前に降谷くんが俺の元を訪ねてきた時のことを思い出す。
(回想)
降:「FBI…頼みたいことがあります」
いつもは冷静沈着で、俺に対する敵対心で溢れた視線を向けている降谷くん。
しかし、この時の彼は全く違った。
赤:「どうした?」
降:「ミアの護衛をお願いしたい」
赤:「何かあったか?」
俺は、既にハンスと協力して護衛をしている素振りを全く見せないように訊ねる。
降:「ミアがコードネームを得ました。貴方なら、この意味がわかりますよね?」
赤:「ああ」
降:「ミアの潜入に関する情報は、直接送ります。手段は、貴方の好きにしてください」
俺の返事を待たずに、降谷くんは足早に立ち去ろうとした。
しかし、俺は彼を呼び止めた。
赤:「降谷くん。俺も伝えることがある」
彼は、振り返らずに立ち止まった。
俺は、構わずに続ける。
赤:「潜入に関する情報共有は不要だ。既に貰っている。君には悪いと思っているが、密かに動いていたんだ。すまんな」
降:「礼は言いませんよ…FBI」
赤:「ああ。構わん」
俺の返事を聞いて、今度こそ彼はその場を立ち去った。
(回想終了)
あの時、彼が俺に見せた表情。
あれは、愛おしい者を自分だけで守りきれない悔しさと、なんとしてでも守りたい真摯さが入り混じった正義感にあふれた男の顔だった。
赤:「彼も変わったな…」
そう呟き、俺は今日の監視ポイントへ急いでマスタングを走らせた。