第6章 コードネーム
ジ:「コードネームは、『キルシュ』だ。この酒の正式名は、『キルシュヴァッサー』だが長すぎるからな」
『キルシュ…』
ジ:「ドイツとのハーフのてめぇなら、この酒が何に使われているかも知っているだろ?」
『えぇ。ケーキの香りづけによく使われるけど…カクテルの「アカシア」を作るのにも使われるわね…ジンベースのカクテルだったかしら?』
ジ:「余計なことまで…」
『貴方が聞いたんでしょ?』
ジ:「チッ」
ジンは不機嫌さを増した表情を私に向けるが、私はそれには怯まなかった。
ジ:「それだけ肝が据わっているから、あれだけの情報を取ってくるわけだな」
『え?』
ジ:「RUMの期待を裏切るなよ。後、俺はまだ認めてねぇことをわすれるな」
ジンは私の疑問など無視して、それだけを告げて消えていった。
私はジンが残した言葉を心の中で反芻しながら、彼が去った後をじっと見つめ続ける。
(『やっぱり…ジンは疑っている?』)
降:「帰ろう?」
今まで黙っていた零さんが私に声をかける。零さんの声に、現実に引き戻された私。
『えぇ』
降:「気にすることはない…着実に進んでいる証拠だから」
『うん』
私は零さんの言葉を今は信じようと心に決めて、彼のRX−7に乗り込んだ。
その時、零さんが複雑な表情を浮かべていたことに気づかずに…