第6章 コードネーム
『零さん…』
涙が落ち着いた私は、そっと顔を上げて零さんを見た。
そこには優しいけれど、少し心配もしている彼の顔があった。
降:「どうした?」
『お願いがあるの。ダメなら、正直に言って欲しい』
私は、躊躇いがちに言葉をつむぐ。
降:「言ってごらん」
零さんの表情は優しさだけに変わり、私が言葉を次ぐのを待っていた。
『零さんは「レーア」って、呼ばないで欲しい』
降:「…ああ。わかった」
一瞬だけ躊躇いを見せた零さんだったが、すぐに優しい表情に戻り、同意してくれる。
私は『この優しさに甘えているな』と思いながら、言葉を続けた。
『ごめんなさい。すごく無理なお願いをしていると思う。長期の任務は覚悟していたけれど、「レーア」って呼ぶ人ばかりだと…気が抜けなくなるの。本来は味方のはずの貴方も疑いそうになる…』
降:「うん…」
『本来の任務達成のために、「レーア」を完璧に演じきる。けれど、貴方とは真のパートナーで居たい。ちゃんと、本音を話したいから…お願い』
降:「ああ…わかった。ミア。頼ってくれて、ありがとう」
そう言って、もう一度零さんは私の頭を優しく撫でてくれた。私は零さんへ心から安心した笑顔を返した。
その時、零さんが持っていた私の携帯が着信を告げた。
余程のことがない限り、電話がかかってこないことに少し私は訝しりながら、零さんから携帯を受け取る。
画面に表示された着信相手の名前に、私は息を飲みながら電話にでた。