第6章 コードネーム
差し込む朝日に気づいて、私は目を覚ました。大きく伸びをしようと体を動かしてみたが、上手くいかない。なぜなら、
降:「よく眠れた?」
その声の主が今日も、私を後ろから抱いているからだ。
『えぇ』
降:「よっかた」
『ねぇ…バーボンって』
降:「ん?」
『後ろから抱くの好き?』
私は日頃から疑問に思っていたことを聞いてみる。
降:「そうだな…君を閉じ込めたいんだ…きっと」
『何それ?』
少し冗談めかして言う彼の言葉に、私は真意を読み取れずに質問を続ける。
降:「さぁ、準備しよう」
しかし、零さんはその先を誤魔化すように私の頭を優しく撫でて、ベッドから降りていった。
『何それ!』
もう一度同じ言葉を、今度は力強く彼に向かって私は言う。しかし、零さんは振り返ることなく黙ってベッドルームを出ていった。
私は諦めてベッドから降り、彼を追いかけるしかなかった。
降:「コーヒー飲む?」
先へ行った零さんは備え付けられているコーヒーメーカーに、カップをセットしていた。
『うん』
そう答えた私は部屋に差し込む朝日に誘われて、全面ガラス張りの窓辺に立とうとする。
すると、後ろから腕を掴まれて零さんに引き寄せられた。
『どうしたの?』
降:「言っただろ?」
『え?』
降:「閉じ込めたいって。あんな所に立ったら、何処かから君を狙っている奴に見つかる」
『もぅ、冗談じゃなかったの?』
先ほどとは違う零さんの真剣な声に少し驚きながら、私は努めて明るく問いかける。
降:「冗談じゃないと言ったら?」
『言ったでしょ?私は貴方だけを見ているって』
降:「そうだった…」
それ以上は話すことなく、零さんは掴んでいた腕を緩めて私から離れていった。
室内には、コーヒーの香りだけが漂っていた…