第6章 コードネーム
『この中から、明日のターゲットを選んで良いのね』
降:「そうみたいだね」
『いつも、こんなに指示がアバウトなの?』
私は、ジンから届いていた明日の任務の指示とターゲット一覧を見ながら零さんに問う。
降:「いや、違う。これは君を試しているんだ」
零さんは、顎に手をやりながら一覧を眺めている。
『試している?』
降:「ああ。今回の組織の目的は、裏カジノ社会を牛耳ることだけじゃない。その先を見据えている」
『その先?』
降:「日本国内でカジノが合法化された時に、その世界を手中に治めることだよ」
『なるほど。だとすると、既に政界との伝手があるターゲットが良いわね』
私はもう一度、ターゲットリストに目を落とす。
降:「流石。僕のパートナーは優秀だ」
そう言いながら、零さんは私の端末に表示されたターゲットリストのある男の名前を指さした。
降:「今回のターゲットは、この人」
『貴方こそ、調べるのが早いわね』
私は、零さんの賞賛の言葉をそのまま彼に返した。
降:「以前から目をつけていたから」
言外に「公安が」という言葉を含んだ笑みを零さんは漏らす。
『そう。じゃぁ、色々と手間が省けそう?』
降:「そうでもないさ。尻尾が掴めない男だから」
『ふーん…だからこそ、私が役に立つんでしょう?』
私はそう言って、零さんにウィンクをしてみせた。
降:「そうだったね。期待しているよ」
零さんは、そっと私の頬に手を添えた。私は、それに応えるように自身の手を重ねていた。