第5章 潜入 ★
降:「ご紹介します。彼女は僕の恋人のレーアです」
私と零さんが仄暗い倉庫の中に入っていくと、既に停車していた黒のポルシェの扉が開き、1人の男が降りてきた。私はその顔を見るや否や、相手に拳銃を向けたくなる衝動に駆られた。目の前にいるのは、レオナの敵であるジンだったからだ。
ジ:「てめぇの恋愛なんて、興味ねぇんだよ。バーボン。俺が知りてぇのは、役に立つかどうかだ」
ジンは無駄話は不要だと言わんばかりに、零さんを一瞥する。
降:「僕が保証しますよ」
ジ:「てめぇの保証なんて、関係ねぇ。結果を出せって言ってんだ」
そう言って、ジンは携帯を私に投げてよこす。私はその携帯を受け取り、画面を見る。画面には、業務指示が映し出されていた。
ジ:「てめぇ専用の端末だ。明日、その船にバーボンと共に潜入しろ。詳細は、そこに書いてある通りだ。質問は受け付けねぇ」
相手を圧倒する気迫と共に私を一瞥してから、ジンはポルシェの助手席に乗り込もうとした。しかし、その動きが止まる。倉庫の入り口から、一台のハーレーダビッドソンが入ってきて、ポルシェの前に停車したからだ。
ベ:「あらぁ、ジン。可愛い子猫ちゃんを独り占めしないでくれる?」
ジ:「あぁ?」
明らかに不機嫌さを増したジンの言葉を無視して、ハーレーダビッドソンに乗った女性は優雅にヘルメットを外しながら、私たちに向かって歩み寄ってくる。その顔を見て、私はベルモットだと気づく。
ベ:「思った通りね。バーボンの恋人だけあるわ」
そう言って、ベルモットは私の顎を持ち上げる。
ベ:「私はベルモット。あなたの名前は?」