第5章 潜入 ★
降:「準備は完璧?」
『ええ。風見さんからID一式も受け取ったわ』
私は、風見さんが準備してくれた運転免許証やパスポートを零さんに見せる。私たちは今、零さんのRX−7で組織との待ち合わせ場所に向かっている。
待ち合わせ場所は横浜港近くの古い倉庫街だ。やはり零さんの予測は当たっているようである。
明日からこの港に世界で5本の指に入る豪華客船、「サンクチュアリ号」が入港する。
降:「よし。行こう」
零さんは、倉庫の間の目立たないところにRX−7を停める。私は、装備品を確認して車から降りようと、ドアに手をかける。すると、先に降りた零さんがドアを開けてくれる。
『ありがとう』
私は、零さんに感謝を伝えて立ち上がろうとした。しかし、その動きを止める。零さんが私の前に跪いたからだ。
降:「これは僕から」
跪いた零さんは、私の左足を持ち上げて靴を脱がす。その優雅な動きに私は目を奪われ、彼の動きを黙ってみていた。
零さんは私の左足を彼の膝に乗せ、ロングスカートの裾を少しだけ捲る。そして、私の足首にゴールドのアンクレットをつけた。
降:「どこに居ても、必ず貴女を見つける」
そう言って、零さんは私の足を軽く持ち上げて足の甲に口付けをした。
『バーボン…ありがとう』
このアンクレットの意味を理解した私は、彼の頭を優しく撫でた。