第4章 告白
赤:「辛い経験をしたな。そして、今まで頑張って来たんだな」
『はい…』
赤井さんは、私が無理に悲しい気持ちを押し戻そうとしていることに気づいたのか、優しい声音で私の気持ちを代弁してくれた。
その言葉をきっかけに、私の目には涙が溢れた。それに気づいた赤井さんは、私の肩をそっと抱き寄せる。
赤:「俺の前では、無理をするな。命に変えても守ってやると言っただろ」
『ええ…』
私は自然と涙が止まるまで、赤井さんに体重を預けながら泣き続けた。
『ありがとうございます』
気持ちが落ち着き、私は赤井さんに預けていた体を戻しながら、彼に感謝を伝える。
赤:「構わない。俺も亡くしているからな」
『亡くしている?』
赤:「ああ。俺が組織に潜入するキッカケを作ってくれた女性をな」
その女性を思い出しているのか、赤井さんはその先を口にしない。
『大切な人なんですね』
私は失恋に似た想いを心に宿しながら、赤井さんに訊ねる。
赤:「大切か…守りたかったとは、思っているよ。今でも」
そう言って言葉を濁す赤井さんを、私は黙って見つめる。
赤:「だからこそ、これ以上は組織に深く関わって死ぬ奴を出したくないんだよ、俺は」
『それが、赤井さんの個人的な想いなんですね』
赤:「ああ」
そうつぶやいて、今度は赤井さんが感情を押し戻すようにグラスに入ったバーボンを飲み干した。
しかし、私はその様子を黙って見ているしかできなかった。赤井さんと私の共通点を見つけた嬉しさと、彼の想い人の存在を知った悲しさが混ざり、私はどうして良いかわからなくなってしまったからだ。