第1章 出会い
会議終了後すぐに、私は赤井さんを追いかけた。
『赤井さん!少し良いですか?』
言いながら、私は喫煙室へ入る彼の腕を掴んだ。
入室を妨げられた赤井さんは、少し不機嫌そうに振り返える。
赤:「どうした?」
『先程は、ありがとうございます。その、助けてもらって…』
最後の言葉を消え入りそうに言い、下を向いてしまった私。
一瞬、「何のことだ?」と迷った赤井さんだったが、すぐに私の意図に気付いたようで
赤:「気をつけろよ。君は魅きつけるからな」
と言いながら、彼の腕を掴んでいた私の右手をやさしく撫でた後、彼は私の手を彼の腕から離して、喫煙室へ消えていった。
『やっぱり、優しい』
赤井さんの温もりが残る場所を、左手でそっと包みながら私は彼が見せた「優しさ」を味わっていた。
私へ向けられている、もう一つの視線にも気づかずに…