第1章 出会い
降:「今回、新たに潜入する人を決めたいと思います。
RUMはハニートラップができる女性を欲しているのですが、
どなたかいらっしゃいますか?」
会議室の視線が一気に私に集まる。
『Ja…そうですよね。もちろん、私が潜りますよ』
私がBNDだけではなく、世界中の諜報機関の幹部内でハニートラップを得意とする潜入捜査官だということは有名のようだ。
事前にボスから聞かされていたし、視線が私に向けられること自体はなんの不思議でもなかった。
ただ、このやり取りが不快だった。
諜報機関といえども、女性の潜入を強要することはできない。
だから、本人が申し出ることが必須。毎回、このやり取りが発生する。
『予定調和だわ』
と小さく呟きながら、会議室全体を見渡した私は
ただ1人だけ、私に視線を向けない男に気づいた。
綺麗な黒髪に人を魅きつける翠色の瞳。目の下の隈が特徴的な男だ。
名前は確か「赤井秀一」。
私の視線に気づいたのか、赤井さんが一瞬こちらを向いた。
赤:「降谷くん、続けて」
私に集まっていた視線を降谷さんへ戻すようにかけられた言葉。
その言葉は冷たいようで、私が感じていた不快な視線を一瞬で蹴散らす言葉にもなった。
『まさか?!』