第3章 偽装 ★
『バーボン……』
少し落ち着きを取り戻した彼女が、先ほどよりもハッキリとした声で呼びかける。
降:「どうしました?」
『……続き、するよね?』
降:「余裕ですね?」
『そんなことないけど……あの…』
彼女は先の言葉を躊躇い、僕から目を逸らした。僕はもう一度、安心させる為に優しく彼女の頭を撫でる。
降:「ミア、安心して言ってください」
『うん……怒られても仕方ないんだけど』
まだ、決心がつかず言い淀む彼女。シュヴァルツさんが言っていた慎重派な一面だ。それだけ、今から伝えようとしていることが彼女にとっては大切なことなのだろう。
降:「怒らないので、話してみてください」
『勝手なこと言っているのは、わかっているけど。お願いがあって』
降:「お願いですか?」
『あのね、潜入するまで待って欲しいの。その……』
そこで一度、言葉を止めてから、彼女は意を決した目を僕へ向ける。
『挿れるのを待って!』
降:「……はい?」
意を決した彼女の声は、室内に響き渡る。先程まで、甘い声を出していた同一人物とは思えないくらいの勢いに、僕は呆気に取られる。その姿を見た彼女は、慌てて言葉を続ける。
『ごめんなさい!こんなこと言っているの、やっぱり変よね。任務のためって言うのは、わかっているんだけど、まだ、気持ちがついて来なくて。でも、でも……んぅ?!』