第2章 それぞれの思惑
降谷Side
集合会議で抱いた疑問をすぐに確かめたいと思い、僕は彼女に声をかけようとした。
しかし会議のホストでもある僕の周りには、会議が終わるや否や、各国の捜査員たちが質問をするために集まってきた。
逸る気持ちを抑えながら、それぞれの質問を答えていた僕に、少し離れたところから初老の男性が声をかける。
男:「降谷捜査官。すぐに私の部下を紹介したいんだが、よろしいかな」
優しいが、一瞬にして周りを静かにさせる鋭さも併せ持った声の主は、彼女のボスだった。
内心で「助かった」と思いながら、周りにいる捜査官たちにお詫びして、彼の元に向かった。
降:「ありがとうございます。シュヴァルツさん」
シ:「気にしないでくれ、降谷捜査官。早く私の部下を紹介したかっただけだから」
シュヴァルツさんは携帯電話を開きながら、言葉を続けた。
シ:「さてさて、あのPrinzessinはPrinzを探しにでもいったかな。ここに素敵なPrinzがいることも気づかずに」
降:「ご冗談を!」
彼はいなくなった部下を「王子を探すお姫さま」に例えながら、携帯電話の操作を続けていた。
シ:「この先の喫煙室にいるみたいだ。行こうか」
どうやら彼女の位置情報を確認していたようである。
「庁舎内の位置情報まで正確に確認できるとは、油断できないな」と僕は思いながら、彼の後に続いた。