第2章 それぞれの思惑
『ボスは、そんな状態で私が作戦に参加することを危惧した。けれど、私はボスに訴えたわ。私は、彼女から組織の壊滅を託されたって。彼女が最後に私に送ってくれたメッセージを見せながら』
私は、空いている左手で携帯電話を取り出し、彼女から届いたメッセージを零さんに見せる。ボス以外の人にこのメッセージを見せたのは初めてだ。それくらい私は、零さんを信頼し始めていた。
『その様子を見て、ボスは折れたわ。ただし、ある条件を私に出してきた』
降:「ある条件?」
『絶対に死なないこと』
降:「え?」
『ボスは、私の性格をよく知っていて。私が敵を目の前にしたら、冷静さを欠いて壊滅のために死をも厭わなくなるって懸念したみたい。それは、間違ってないと私も思う。だから、この条件を出したの』
降:「リミッターというわけですね」
『そうリミッター。ボスにとっても、部下をこれ以上亡くしたくないという気持ちもあると思うわ』
降:「ええ。そうでしょうね」
『だから貴方が今回のパートナーというのは、凄く嬉しい。私を理解してもらえるのは、同じ境遇の人じゃないとダメだと思っていたから。プロのくせにリミッターが必要って理解してもらえるのは、なかなか難しいから』
降:「僕も同じ気持ちです」
そう告げて、零さんは静かに微笑んだ。
『ああ、これが本当の笑みだ。彼は本音を言っている』と私は思った。彼の真意を探り終えた私は、彼の拳に添えた手を離そうとした。
しかし、その行為は阻まれた。零さんが、私の手を掴み返したからだ。