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恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第69章 彼女の推し / 🌫️



「おーい、蛍おるかあ?」

店長がみたらし団子を食べ終わった直後、店の引き戸がガラガラと開いた。

「鋼鐵塚さん、こんばんは! 鉄珍様が新作をお作りになったんです〜味見して下さいよ」

「鉄珍さん!! それに小鉄…こんばんは」

「あれ? どうして昆布頭のあなたがここにいるんですか」

出入り口に立っていたのは、店長のお面より更に愛嬌を感じるひょっとこ面の小柄なじいさんと、その弟子である少年だ。

「よう、有ちゃん。こないだはお買い上げありがとなあ。そりゃバイト先やもんなあ。おって当然やろ」

「なるほど、昆布頭は鋼鐵塚さんの一番弟子って事ですか」

はあ? 俺がいつ筋肉ムキムキの弟子になったつーんだよ!!
ったく、ふざけんじゃねえ、このひょっとこ小僧が!!

「ん? どこからか殺気を感じるのですが、気のせいですかねぇ。今回の甘味も自信作なんですよ、鉄珍様にはいつも驚かされます!」

なんだ、このチビすけ。鉄珍さんが作ったのに何でお前が自信満々で勧めて来るんだよ。

「有一郎さんもどうぞ。鋼鐵塚さんからあなたはグルメだと聞いていますので、感想を教えて下さい」

「お、おぉ。ありがと」

さっきまで昆布頭ってバカにしてたくせに、人に頼む時はきちんと名前呼ぶんだよな。小鉄って。

差し出された桐箱に並べられているのは、手のひらに収まる大きさのどら焼きだ。

こしあん、つぶあん、塩つぶあん、あんバターの四種類らしい。直感で気になったあんバターを手に取り、口に入れた。

「相変わらずうまい…」

「おお、有ちゃんのうまいは間違いがないなあ。小鉄、あんバターは商品化で決定やな」

「はい、かしこまりました! しかし昆布頭、あなた語彙力が乏しくないですか? 鉄珍様の甘味は美味しいに決まっていますが、もう少しこう…具体的な味の感想が俺は聞きたかったんですけど」

…さっきのなしだわ、前言撤回。やっぱこのガキすっげーむかつくわ。

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