• テキストサイズ

恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第69章 彼女の推し / 🌫️



〜有一郎から見た景色〜



「店長お願いします! 七月の三連休、休ませて下さい…!」

「三連休、休みたいだと…? 時透有一郎!! お前が働いている店は何の店だ?」

「飲食…業、です」

七月初旬。俺、時透有一郎は開店前のバイト先で、店長に休暇の申請を直談判している。
目の前には愛嬌があるひょっとこの面を被っている男が一人。

だけど作務衣(さむえ)から覗く両腕は筋肉がムキムキで、その手には大きなヘラがある。


「週末と連休はうちの繁忙期!! そんな時に休むだあ? ふざけんじゃねぇぞ! 面接の時にも言ったよな?」

「あの! 店長、これどうぞ! それから俺、三連休前に三連勤します…! 休み中は沢渡が代わりにシフトに入ると言ってくれました!」

「な、何でお前がこれを持ってるんだ…??」


よし! これで俺の休みは確定だ。

居酒屋「ひょっとこ」の店長である鋼鐵塚蛍は、この店の看板メニューであり、俺の大好物の【ひょっと焼き】を開発した料理人だ。

この人の作る料理はどれも絶品だが、職人にありがち?な変わり者。

真夏のクソ暑い時期でもひょっとこ面は外さない。

繁忙期に休みたいと申し出れば、普段後頭部で結んでいる髪を怒髪天のごとく振り回し、大ベラを両手に持って追いかけ回すとんでもない野郎…人だ。


店長との攻防にはいつも負けてばかりの俺だったが、今日はとっておきの物を彼に献上した。

「うめぇ…! 美味くて涙が出るぜ! 相変わらずのこの美味さ、香ばしさ!!」

うおおおと獣が吠えるがごとく、店長が夢中になって食べているのは鉄珍堂のみたらし団子。

値は少々高めだが、間違いのない味。この和菓子は彼の大好物である。俺も一回食べた事があるけど、本当に絶品。流石老舗だなって感動したんだよなー。

「連休に休みたいなら、みたらし団子が一番だよ。どこのお店の物でも店長はオッケーだけど、確実に休みたいなら鉄珍堂が一番!!」

この起死回生の方法を教えてくれたのは、沢渡七瀬。

俺の双子の弟、無一郎の彼女だ。


/ 992ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp