第67章 七支柱春药 〜壱〜 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
「ま、嫁三人いるからな。俺」
「…そうですね…三人いらっしゃいますよね」
里のしきたりで嫁となる者を三人娶る事になっている。これを天元から聞いた七瀬は大層驚いた。
忍びと言う存在は師範である安藤から聞いてはいたのだが、自分の身近にいるとは夢にも思わなかったからだ。
「子孫を絶やさない為ですっけ」
「お、よく知ってんな」
「父が昔起こった出来事を調べるのが好きで。今まで日本がどんな歴史を辿って来たかとか、よく話してくれました」
「父親とは仲良いのか?」
「…そうですね。家にいる頃から私には甘かったので」
—— 俺とは正反対だな。天元は目を細めて懐かしがる七瀬を見ながら、そんな事を感じた。
天元は六人きょうだいの長男として、この世に生をうけた。
しかし、時代の移り変わりにより、忍びが段々必要とされなくなる事に焦りを感じた彼の父親は子供達に過酷な訓練をさせる。
その結果、きょうだいの殆どは命を落とし、生き残ったのは天元と弟の二人だけになってしまった。
この弟の気質が父親によく似ており、人の気持ちや体をただ消耗させる忍びの生き方に疑問を持った天元は雛鶴、まきを、須磨を連れて抜け忍となる事を選択する。
「…さん、天元さん。どうされたんですか?」
「ああ、わりぃ。ちょっと昔の事を思い出してた」
「…そうですか」
普段見せる明るくて豪快な姿でもなく、口付けを交わす時の艶っぽい表情でもなく、どこか陰を感じさせる雰囲気。
これは七瀬が今まで見る事がなかった音柱だ。
「お、どーした。急に積極的になったな」
「何か…天元さんが寂しそうだなって」
『寂しい、ねぇ』
天元の太い首に華奢な両手を回した七瀬は、そのまま自分の体をピタリと彼に密着させた。