恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
「ん? 聞こえてねえわけないよな。俺のここをお前のここにいれてえって言ったんだけど」
「なっ?? えっ? さっきは血鬼術なんて、聞いてない、って!!」
「あー、あれな。半分はホントだが、半分はハッタリだ」
「は、はったり…?」
「おーそうだ」
そんな事言われても平気そうにしていたでないか。七瀬は天元の発言が全く信じられず、大層困惑している。
天元自身も先程彼女にした己の行動が信じられず、どうした物かと考えを巡らせていた。
「俺忍びやってたから、毒への耐性を身につける為に訓練してたんだわ。敵から盛られた時に対処出来る為にな。ま、それと同時に薬の類も効きづらくなったんだ。これはしょーがねえんだけど」
「へ、へえ…そんなしきたりがあるんですね。忍びって」
「おう」
だから血鬼術と聞いてもそんな境遇で育った自分には無効だろう。
そんな考えでいた音柱。しかし ——
「さっきも言ったけどさ。五百年生きてたってのは、伊達じゃねえんだなって。今すげぇ実感してんの。もうさ、お前見てっとムラムラして仕方がねえ。これでも大分理性抑えてんだからな」
「え、えぇー…むら、むら??」
七瀬は己の目を凝らして、目の前にいる天元に注目する。
臙脂色(えんじいろ)の双眸は何ら普段の彼と違いはないように見えた。
『本当に? 音柱…いつもと全く変わらないんだけどな』
「ん? どうした?」
天元が顎に手をやると、肩につくかつかないかの銀髪がサラリと揺れた。すると彼の爪先を彩る紅が目に入る。
『うわぁ…男の人でこんなに爪紅が似合う人っているんだなあ』
頼り甲斐があり、堂々とした天元は性格に負けず劣らず、体躯は大正の時代に生きている人間の基準を遥かに超えている。
故に、太い肩幅に太い二の腕は何もしなくとも目立つ。
『ずるいよね…こんなに綺麗な顔立ちで男らしい体格。お嫁さんは三人で、それでいて近寄りがたくないなんてさあ』