恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
「願いを叶える龍の鬼、ねぇ。何で柱が対象なんだか…俺、効いてねーし。沢渡、お前騙されたな。この通り何ともないぜ?」
「そう、みたいですね。私もいつもの音柱だなあって思います」
はあ、と七瀬は宇髄邸にやって来て最大級のため息をついた。天元が今言った通り、媚薬効果は全く効いていない様子だ。
無一郎の時のように熱い視線もなければ、色めいた雰囲気にもなっていない。座卓を挟んで自分を見ている天元はいつものように余裕めいている。
「おじいちゃんの龍だったんですけど、五百年生きてるからたかだか十年二十年生きて来た人間には負けないって…言ってたんですけどね」
七瀬が右手を伸ばした先には、先程天元の嫁達が持って来た湯呑みと甘味が置いてある。せっかくなので頂くと天元に断りを入れた彼女はまず、小皿にのったみたらし団子を口に持って行った。
甘く粘り気がある醤油系のタレに、もっちりとした生地で作られている団子は、七瀬の日々の疲れをたちまちに癒していく。
置いてあった二本の団子を夢中で食した彼女は、湯呑みに入ったほうじ茶を一口飲んだ。
「お団子もお茶も絶品。これ以心伝心で出されているんですっけ?私も月に一度は行くけど、あそこ何でも美味しいですよね」
そう言えば今月はまだ行ってないな。
食べに行きたい —— 食欲が脳内を支配する気配がする。七瀬がジッと串を見ていると、天元がふっと小さく笑みを浮かべた。
「ほんっとお前花より団子だな! 俺ら柱にしか効かない媚薬つったか? 全然効かねえわ」
「そんなにバッサリ切られると、本気で傷つきますよ」
天元もまた小皿にのったみたらし団子を、二本続けて食した。口にすると彼の端正な顔が破顔する。
『…!! 私が音柱の雰囲気にやられそう…』
今七瀬の目の前にいる天元は、着流しをゆったりと着用し、いつも束ねている髪はおろしている。
隊服姿とはまた違う天元の雅な雰囲気に、胸が静かに高鳴り始めた。