恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
「また君を抱きしめて、良いかな」
「…いいよ」
少しだけ体の熱さが落ち着いた七瀬とほてった体の熱が冷めない無一郎。対照的な二人はお互いの体をゆっくりと近づけると、背中に両腕を回した。
すると —— 七瀬の規則的な呼吸を互いの肌が触れ合った箇所から感じた無一郎の両のまぶたが少し重くなって来る。
「君、本当にあったかいね」
「それは無一郎くんも同じだよ。あたたかいし、心地よい」
「そうか、な…」
ぽんぽん、と自分の背中にあたる小さな手の温もり。一定の拍動で動く七瀬の掌に安心した無一郎は、心地よい入眠に誘われ、そのまま眠ってしまった。
「無一郎くん?」
左肩にかかる僅かな重みにハッとした七瀬は、声をかけたものの、返答がかえって来ない事にほんの少しの寂しさを感じる。
きっと彼が目を覚ました時には、自分とこうなった事など忘れてしまうのだろう。龍の鬼は七瀬にそんな説明はしなかったが、彼女は確信していた。
『情交が無事終わったら、その人に効いてる術はおしまいって…事なんだろうな。思った以上にキツいや』
若年ながらもたった二ヶ月で柱へと昇格した無一郎。
七瀬は年下ながらも一般隊士から崇拝されている彼の存在をどこか遠くに感じていた。
しかし、こうして体と心を近づけた結果 —— それは無一郎の全てではなく、あくまでも彼という人間の一部分だった。
『霞柱ってみんなが言うから、つい自分も凄い人なんだって思ってたけど…実際凄いけど…』
ゆっくりと無一郎の体を自分の体から離した七瀬は、先程まで彼が着用していた寝巻きを羽織らせ、ひとまず敷いてある布団に寝かせる。
『せめて綺麗な布団に寝かせてあげなきゃ』
押入れの中を確認した彼女は複数枚の敷き布団を引っ張り出し、新たに敷いた。
『目が覚めた時、霞柱の記憶は…ううん、それは私が気にする事じゃない』