第66章 クリスマス🎄お題夢 / コミュニティ内で募集
悠仁が華乃の病室へ向かうべく、一気にギアを上げて駆け出した。
振り向かないのは仲間を信じる証。
廊下を全力で駆け抜け、階段を登り、ついに彼女の病室の前までやってきた。迷いなく部屋の扉を開けた時、悠仁は目を見開いた。
「華乃……?」
「あ、悠仁。私のお姉ちゃんを紹介するね」
心底嬉しそうに笑い声を上げる少女の隣にいるもの。
それは、どう見ても人ではなかった。
幾度となく対峙してきた嫌悪する存在。人の負の思いから生まれ出る、その怪物。
「……華乃、ソレから離れろ」
大きい花のような姿を持つそれは、紛うことなき呪霊。揺れている花弁に見えるそれは、人の手を模しているような形をしている。中心部には赤い口がついていて、嘲るように下品に笑った。
華乃の目元と身体に絡みついている触手をもつバケモノを、彼女は姉と呼ぶ異様な光景だった。
「何言ってるの?私の家族だよ?」
華乃は不思議そうに首を傾げる。そして、まるで愛しいものを見るように触手を撫でる。ケタケタと耳障りな笑い声が、呪霊から漏れた。
「ア、ヒヒ…………プレゼ、ント……ヒヒッ」
もうこちらの声は届いていない。
悠仁は彼女に駆け寄ろうとしたが、その行く手を異形の触手が阻む。
早く解決すべきだと術師として判断しつつも、攻撃を回避しながら距離を取った。
呪霊に触れられた彼女の目は、呪われたせいか濁っており、ただ眼前の異形だけを見つめている。
「……っ、華乃の姉ちゃんは死んだんだよ!もういない!」
「違う。お姉ちゃんはここにいる!……だって……だって、星の女神様がプレゼントをくれたんだもん!」
「それは……そいつは、アンタが生んだ呪いだ!」
呼びかける必死な声にも、少女の心は微塵も揺るがない。虚空を見つめる瞳には、正気というものが全く無かった。